頬に降り続いていた雨が、止んでいることに気付いた。俺は眠っていたのだろうか。

「マスター」

もう雫は落ちて来ないが、光も差して来ない。

「マスター」

すぐ隣にカイトがいるのが分かった。

「死んじゃったかと思いました。急に動かなくなるんで。僕、ちゃんと加減しましたよね? だからびっくりしちゃいました。まだ痛みますか?って…当たり前か。刺されたんですもんね。 あれ…?起きてます?マスター?」

どうやら、俺が意識を失っていたのは一瞬らしい。そうか、刺されたのか、と、とっくに限界が来ているはずの脳で必死に状況を飲み込む。 意識が鮮明になっていくにつれて、体中がズキズキと痛み出した。錘を付けられたように手足はピクリとも動かせない。 頭がグラグラと揺れる。

(俺は…死ぬのか?)
「殺しはしませんから、安心して下さい。機会ぼくがこの世界を狂わせることは許されないですから、ね。」

まるで俺の心を見透かしたようにカイトが言う。その声からは感情が抜け落ちてしまっている。 カイトが今何を考えてみるのか、俺にはさっぱり理解出来ない。

「マスター、これからもずっと僕と一緒にいて下さいね。ずっと…。」

地面にじっとりと染み込んだ自分の血が、妙に暖かかった。







*太陽